「シルヴァカーヌ修道院」

セナンクの次に訪ねたのはシルヴァカーヌ修道院。

プロヴァンスの三姉妹の中では末っ子にあたります。

 

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Abbaye de Silvacane, 教会堂 1175-1230 / 修道院諸施設および回廊 1210-1300

 

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祭壇のある側。セナンクでは祭壇周りの面が半円形になっていましたが、シルヴァカーヌではあらゆる装飾を排すというシトー会の厳格主義を徹底して守ったため、(つまり曲線も装飾とみなし)直線的なデザインになったそうです。

 

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教会堂祭壇。

ここでも他のシトー会修道院と同じく、美しい石積みが(おそらく)当時のまま残っています。

これほど美しい修道院ですが、シトー会がすっかり衰退した後は破壊の危機にさらされたらしいです。18世紀末、この修道院はマルセイユ運河建設のために、解体され、あわや石材として利用されるところだったのです。しかし運河の設計技師が、建物や環境の美しさを力説したため、破壊をまぬがれたそうです。シトー会士たちが丹精込めてつくったその優美さが、聖堂を護ったのです。いい話ですね。

 

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入り口側を見る。

 

教会堂だけ見ても、セナンクとはだいぶ印象が違います。同伴した友人曰く、「やんちゃな末っ子」だそうです。…なんとなくわかる。

三姉妹それぞれにキャラクターがあり、印象も違う。とはいえ、シトー会という「親」が同じなだけに、共通している部分も多いです。例えば、シトー会の建築には、部屋の配置や空間の構成に決まった「型」というものがあったらしく、三姉妹はすべてその型に忠実に建てられているのです。

具体的には、各部屋は以下のように配置されています。

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祭壇は、キリスト教の慣例に従って東を向きます。(セナンク修道院は例外的に北側を向く)

 

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そのまま北側を向くと、回廊に出る出入り口が見えます。

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出入り口を出ると、回廊の東側の辺にあたります。
東側には集会室や寝室があります。右側に見える入り口はそれらの部屋に通じています。

 

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そのまままっすぐ進んで左を向くと北側の辺。

北側には食堂があります。

 

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食堂内部。

 

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回廊西側の辺。
敷地に勾配がある場合は、このように勾配にそって段差が設けらます。

 

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そして南側の辺。奥に見える階段を上って右の扉を入れば教会堂に戻ります。

 

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回廊東側に面する修道士達の寝室。

 

このような各部屋の配置構成は、方位の違いはあるものの、3つの修道院すべてに共通しています。しかし構成は同じでも、その印象は全く違います。

この後に載せるル・トロネ修道院とぜひ比べてみてください。

 

また来ます!

 


シルヴァカーヌ修道院

RD 561, 13640 La Roque-d’Anthéron, フランス