私たちの家 林昌二・林雅子 Ⅰ期:1955年、Ⅱ期:1987年 東京都文京区
建築家・林昌二さんの自邸です。
何かひとつ好きな住宅を上げろと言われたら、これです。
この住宅の設計者である林昌二さんは、
ご自身の座を定めるところから、この住宅の設計を始めたといいます。
林さんにとって自分の座のために重要なことは、
少し体を動かせば家全体が見渡せ、
朝日には陽が浴びられ、
冬の夜には足元の暖炉で火が焚ける。
食事がゆっくりできて、終わったらそこでちょっと横にもなれる。
さらには、食器を片付けて本を読んだり、手紙や原稿も書けるように、
気のおけない友人はそこに来て一杯やれるように、などなど…
林さんの居場所のある台所横の空間
テーブルは一般的な椅子座に比べてやや低めの600mm。
日本人に合った、長い時間くつろぐのにちょうどよい高さだと思います。
カウチに座ってちょっと体を動かすと、一番先の玄関まで見通せ、
家が広々と感じます。来訪者が来た時なども確認できて安心。
背後の大きなガラス窓からは庭の景色。
居間とデッキを使ってパーティーなんかをやる時は、台所から様子を伺えてサービス上もとても便利な窓。
また、長居する居場所にするためには、その周りに生活に必要な細々したものを置いておく必要があります。
そのために、円形テーブルの下には脚の代わりに戸棚が作りつけてあり、収納になっています。
小腹が空いた時はここからおせんべいを出してボリボリ…なんて。
書き出したら切りがありません。
このほかにも、書ききれないほど魅力の詰まった、
住宅設計のお手本ともいうべき、私の大好きな住宅です。