ロンドン中心部から電車で30分、ウィリアムモリスの「レッドハウス」。
Red House, Philip Webb & William Morris, 1859-60
レッドハウスは今から約150年前、「モダンデザインの父」と呼ばれるウィリアムモリスが結婚後数年を過ごした家です。
この家は外観ももちろんですが、インテリアがおもしろいです。
これはレッドハウスの部屋に張られている約150年前にモリスによってデザインされた壁紙です。
今家にいる方は、横を向くと同じような壁紙が張られているかもしれません…
壁紙の柄は、このような細かい木彫りの版からつくらます。ちょうど小学校でやった版画の要領で、この版にインクをつけて上からこすり、紙に色をつけていくのです。色がついたら、粗が出てしまったところを目でチェックして、筆で修正を加えて、完成です。
展示室にあった、モリスのデザインした壁紙のカタログ。
いろんな絵柄がありました。
使う色が一色だといいのですが、こんなふうに何色も使った複雑な絵柄の場合、各色ごとに版をつくって、それらを重ねていくことになります。最初の版が終わったら乾かして、乾いたら次の版で別の色を付けまた乾かして…ということを繰り返していきます。
さらに壁紙だけでなく、この家には手の込んだ細工がそこらじゅうにあります。
窓ガラスに
ひとつひとつ鳥の絵が描いてあったり
ドアには
ステンドグラスのようなきれいな細工。
この部屋には
なんと壁一面に絵が描いてあったそうです。
モリスの後の持ち主によって壁は白く塗り重ねられて、今はほぼ見えなくなっていますが、ところどころ塗装が剥げて絵が見えていたり、このように保護されて残っています。
これらの今見ればやりすぎにも思える室内装飾の数々には、産業革命が起こり、大量生産による安くで質の悪い製品が世の中にあふれたことへの批判も込められ ていたようです。モリスについてもっと知りたくなりました。
この家に行って「壁紙」という物への印象がだいぶ変わりました。
これまで柄物の壁紙というと、なんだか安っぽい感じがしていたのですが、そこに関わってきた人たちの歴史の一端を考えると、決して「安っぽい」の一言では済ませられないことがわかります。
産業革命を経た世界の技術は飛躍的に向上し、昔は手作業でひとつひとつ作っていたものが、大量生産できるようになっていった。壁紙も、機械で大量生産されて今ではどこでも見ることができるようになった。
でもその壁紙ももとをたどれば、モリスをはじめいろんな人が、人々の生活を向上させようと手作業で一枚一枚丁寧に作りだしていたものだった。そして壁紙を大量生産できるようにした技術だってきっと、一部の人しか楽しめなかったものをより多くの人が手に取れるように、という想いから、過去の人々の努力によって作られてきたものです。
展示の一部。モリスの言葉。