Kalevankirkko, Raili & Reima Pietilä, 1967
フィンランドの首都・ヘルシンキから北西に160キロ、
人口約20万人ほどのフィンランド第二の都市・タンペレという町があります。
日本で人気のムーミンの博物館などもあって、とてもおもしろい街でした。
写真は訪れた場所の一つ、タンペレのカレヴァ教会。
この教会での一連の体験がとても印象に残っています。
教会へは駅前からバスに乗って向かいます。
駅前からまっすぐ並木道が延びていて、
その先の丘に教会が建っているのが見えます。
両脇に建物のならぶ並木道を通って、
バスは徐々に教会へと近づいていきます。
500メートルほどで、両脇にあった建物と並木は途絶え、視界は大きく開けます。
ここでバスを降り、すぐそばにある小さな丘を登り始めます。
右側からぐるっと回り込む道。
教会を見上げながら、少しずつ、少しずつ入り口へと近づいていきます。
この丘の道は、バスでやってきた訪問者のスピード感を緩めます。
車に乗ってきたスピード感から、人間のペースに戻ることができる。
それは少し特別な場所である教会という場所に向かう時には、
とても重要なことだと思います。
さあいよいよ間近に行き着いて
この建物が実は30メートル近い高さがある
とても丈の高いものであることが分かります。
入り口の横からくるっと、壁が伸びています。
建物が手を伸ばして「さあ、中へどうぞ」と言っているような壁。
その壁に導かれるように階段を上り壁の内側へ入ると、
今まで横に広がっていた空間は一気に縦に広がり始めます。
ここで自分が徐々にこの教会の内部に入り込みつつあることを感じました。
礼拝堂に入る前に、
両脇をコンクリートの壁に挟まれた風除室を通ります。
ここは駅からここまでで、一番小さい空間。
ガラス戸の向こうに礼拝堂が見えます。
扉を開けると、そこは礼拝堂。
空間が一気に広がります。
この広がり感はカメラではなかなか収めることができません。
入り口から一旦横へと広がって祭壇に向かってまた縮まる菱形の平面。
そびえ立つコンクリートの壁と縦長の窓が視線を上へと誘って、
これまでとは全く違う世界に入り込んだように感じます。
先に見える祭壇に向かいます。
この教会の中でも、とても感動したのがこの床です。
途中までは上り坂で、
それから祭壇に向かってほんの僅かですが下っているのがわかるでしょうか。
(もしかしたら下ってないのかもしれません。それほどわずかなものです)
この勾配、これまで丘の下からずっと坂を上ってきた身体にとってはとても効果的で、
その変化はとても劇的なものに感じられるのです。
この勾配を下りながら、丘の下から少しずつ少しずつ近づいて、
自分はいよいよこの建物の体内へ入り込んでいる…と感じました。
歩いていくと独特な形のコンクリートの壁の隙間から外の景色がちらちらと見え、
また天井の見えもおもしろく、大空間にリズムを与えてくれています。
コンクリートの壁もすごく量感があるのですが、
冷たくも重くもなく、温かい感じがするのは、
独特の形とその間から差し込んでくる光の塩梅ゆえでしょうか。
不思議と心が落ち着く空間になっています。
祭壇に着きました。その後ろにある木のオブジェ。
これは入り口近くにあった教会の模型。こんな形をしているようです。
帰る頃には、コンクリートの壁に夕陽が映し出されていました。
教会を出て、入り口を包み込む壁を左手に階段を下ります。
階段を下りると壁はなくなって視界が開け、
今となってはほぼ南側に沈むようになった夕日が見えました。
そして教会を背に、街へと下りていきます。
建築を考えるとき、そこに至って、中に入ってそして去っていく、
そういう一連の流れの中でひとつひとつの空間を考えなくてはなぁと改めて考えさせられました。
また来ます!